なぜ今、企業は社会課題解決に取り組むべきなのか?~持続可能な社会と企業価値向上に向けて~

導入:変わりゆく企業の役割

かつて企業の主な役割は、利潤を追求し、株主の利益を最大化することでした。

しかし、現代社会において、企業に求められる役割は大きく変化しています。

地球温暖化、貧困、格差、人権問題など、世界で山積する社会課題は、もはや政府や国際機関だけで解決できるものではありません。

企業は、その経済力や技術力、そして影響力を活かして、社会課題の解決に積極的に貢献することが期待されています。

本シリーズでは、企業が社会課題解決に取り組む意義とそのメリット、そして具体的な事例について解説していきます。

企業が社会の一員として、持続可能な社会の実現、更に永続可能な社会の実現に向けてどのような役割を果たすべきなのか、共に考えていきましょう。

目次

  1. 社会課題の深刻化と企業への期待の高まり
  2. 社会課題解決がもたらす企業価値向上
    • 2-1. リスク低減と機会創出
    • 2-2. ブランドイメージ向上と顧客ロイヤルティの強化
    • 2-3. 優秀な人材の獲得と定着
    • 2-4. 投資家からの評価向上
  3. ESG投資の拡大と企業評価への影響
  4. ミレニアル世代・Z世代の価値観の変化と企業の対応
  5. まとめ
  6. 次回予告

1. 社会課題の深刻化と企業への期待の高まり

近年、地球温暖化、貧困、格差、人権問題など、世界で様々な社会課題が深刻化しています。

これらの課題は、もはや政府や国際機関だけで解決できるものではなく、企業の積極的な関与が不可欠となっています。

例えば、地球温暖化は、異常気象による自然災害の増加や生態系の破壊など、私たちの生活や経済に深刻な影響を及ぼしています。

2021年8月に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断言され、早急な対策が求められています。

また、貧困や格差の問題は、世界中で多くの人々の生活を脅かしており、社会不安や紛争の原因にもなっています。

世界銀行の推計によると、2020年には新型コロナウイルスの影響で、新たに9,700万人が1日1.90ドル未満で生活する極度の貧困層に転落したとされています。

このような状況の中、企業には、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することが求められています。消費者は、環境や社会に配慮した商品やサービスを選ぶようになり、投資家は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した企業に投資する傾向が強まっています。

2. 社会課題解決がもたらす企業価値向上

企業が社会課題解決に取り組むことは、短期的な利益追求だけでなく、長期的な企業価値向上にもつながります。

2-1. リスク低減と機会創出

社会課題への取り組みは、企業が抱えるリスクを低減し、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性があります。

例えば、環境規制の強化に対応することで、将来的なコスト増や訴訟リスクを回避できます。

また、再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の開発は、新たな市場を開拓し、競争優位性を確立する機会にもなります。

2-2. ブランドイメージ向上と顧客ロイヤルティの強化

社会課題解決に貢献する企業は、消費者からの支持を得やすく、ブランドイメージの向上につながります。

また、社会的な責任を果たす企業に対して、顧客は信頼感を抱き、長期的な関係を築く傾向があります。

2-3. 優秀な人材の獲得と定着

社会課題に関心を持つ優秀な人材は、自らの価値観と企業の理念が一致する企業で働きたいと考える傾向があります。

社会課題解決に積極的に取り組む企業は、そうした人材を引きつけ、定着させることができます。

2-4. 投資家からの評価向上

ESG投資の拡大に伴い、投資家は企業のESGパフォーマンスを重視するようになっています。ESG評価の高い企業は、投資家からの資金調達を有利に進めることができ、株価の上昇にもつながります。

3. ESG投資の拡大と企業評価への影響

ESG投資とは、企業の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)関する取り組みを考慮した投資のことです。近年、ESG投資は世界中で急速に拡大しており、企業評価に大きな影響を与えるようになっています。

〈更に追加〉

GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の調査によると、2020年の世界のESG投資残高は35.3兆ドルに達し、2016年から55%増加しました。日本でも、2021年3月末時点のESG投資残高は3.8兆円となり、2016年3月末時点の2.7倍に増加しています。

GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の調査によると、2020年の世界のESG投資残高は35.3兆ドルに達し、2016年から55%増加しました。

しかし、2022年時点での世界のESG投資残高は30.32兆ドルとなり、2020年から14.1%減少しました。これは主に、米国におけるESG投資の減少が影響しています。一方、米国を除く地域では、ESG投資残高は2020年比で20%増加しており、ESG投資に対する関心は依然として高いと言えます。

日本においては、2022年3月末時点のESG投資残高は493兆円となり、2021年3月末時点の3.8兆円から大幅に増加しています。これは、ESG投資に対する関心の高まりに加え、ESG投資の対象となる金融商品の多様化が要因と考えられます。

このように、ESG投資は世界的に拡大傾向にありますが、地域や国によってその状況は異なります。日本においては、ESG投資は今後も拡大していくと予想されており、企業はESGに関する取り組みを積極的に開示し、投資家からの評価を高めることが求められています。

参考資料:

ESG投資の拡大は、企業に対してESGに関する情報開示を求める圧力を強めています。企業は、ESGに関する取り組みを積極的に開示し、投資家からの評価を高めることが求められています。

4. ミレニアル世代・Z世代の価値観の変化と企業の対応

ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)やZ世代(1997~2012年生まれ)は、社会課題に関心が高く、企業にも社会的な責任を果たすことを求める傾向があります。彼らは、商品やサービスを選ぶ際に、企業の理念や社会貢献活動も重視します。

2021年に実施されたDeloitteの調査によると、ミレニアル世代とZ世代の49%が、購買決定において企業の社会的責任を重視すると回答しています。

また、50%が、環境問題に積極的に取り組む企業の商品やサービスを選ぶと回答しています。

企業は、これらの世代の価値観の変化に対応し、社会課題解決に貢献する姿勢を示すことが、長期的な成長にとって重要です。

5. まとめ

企業が社会課題解決に取り組むことは、もはや選択肢ではなく、企業の存続と発展にとって不可欠な要素となっています。

社会課題解決への貢献は、企業価値向上、リスク低減、ブランドイメージ向上、優秀な人材の獲得、投資家からの評価向上など、様々なメリットをもたらします。

企業は、社会課題解決を経営戦略の中心に据え、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組むことが求められています。

6. 次回予告

次回は、SDGs(持続可能な開発目標)について詳しく解説します。SDGsの17の目標と、企業がSDGsに取り組むメリット、具体的な事例などを紹介します。

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