COLUMN
採用しても続かない理由は、人ではなく仕事の渡し方にあるかもしれない
採用活動の前に業務分解を行い、任せる仕事・必要職能・マイクロスキル・定着設計を整える考え方を解説します。
厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」では、年初の常用労働者数に対する入職率は14.8%、離職率は14.2%と示されています。人が入ることも辞めることも一定数起きる前提で、企業は「採用できるか」だけでなく「入社後に仕事として機能するか」まで設計する必要があります。
「いい人がいない」の前に、仕事が見えているか
採用がうまくいかないとき、最初に出やすい言葉は「いい人がいない」です。しかし、JOBJOINではその前に「任せたい仕事が、十分に見えているか」を確認します。人材不足が続く環境では、求人票を出すだけで偶然よい人に出会える確率は高くありません。だからこそ、採用活動に入る前に、事業上どの業務が詰まっているのか、その業務にはどんな職能が必要なのか、どこまでを入社時に求め、どこからを育成で伸ばすのかを分けて考える必要があります。
特に中小企業では、一人が複数の役割を兼ねていることが多く、経営者や現場責任者の頭の中には「本当は任せたい仕事」があります。しかし、それが言語化されないまま求人票に落ちると、仕事内容は一般的な表現になり、入社後の期待値も曖昧になります。結果として、入社した人は「何を優先すればいいのか」が分からず、現場は「思っていた動きと違う」と感じやすくなります。
採用要件は、人物像ではなく業務構造からつくる
採用要件を考えるときに「明るい人」「主体性がある人」「コミュニケーション力が高い人」といった言葉だけで進めると、評価する側の感覚に左右されます。もちろん人柄は大切です。ただ、事業成果に直結するのは、その人がどの業務で、どんな判断をし、どんな行動を積み重ねられるかです。JOBJOINでは、人物像より先に業務を分解し、必要職能、関連する才能、必要マイクロスキルへ落とします。
| 整理する項目 | 見るべき問い | 採用・育成への使い方 |
|---|---|---|
| 業務分解 | 成果に直結する業務は何か | 求人票・面談・入社後育成の前提にする |
| 必要職能 | 仕事で成果を出す力は何か | 経験年数ではなく、成果行動で見る |
| 関連才能 | どんな強みが活きる仕事か | 配置や育成テーマを考える |
| マイクロスキル | 明日からできる具体行動は何か | オンボーディングと1on1に使う |
| KPI | 何ができれば前進と言えるか | 採用後の評価と定着判断に使う |
採用、再配置、育成、外注、標準化を比較する
採用は強力な打ち手ですが、常に最初の答えとは限りません。業務分解をすると、実は既存社員の再配置で解決できる業務、育成すれば半年で任せられる業務、外注したほうがよい業務、マニュアル化や自動化で負荷を下げられる業務が見えてきます。ここを見ないまま採用すると、本来採用しなくてもよかった役割に採用コストを使ってしまうことがあります。
逆に、採用すべき領域が明確になれば、求人票の言葉は強くなります。「営業事務」ではなく「見積作成、顧客情報更新、納期確認、社内連携を通じて営業の提案時間を増やす役割」と書けるようになります。候補者にとっても、自分が入社後にどのように役立てるのかがイメージしやすくなります。
入社後の定着は、採用前から始まっている
採用と定着を別々に見ると、入社後に問題が起きてから慌ててフォローする形になります。しかし本来、定着設計は採用前から始まっています。どの業務を最初に任せるのか、誰が教えるのか、何をもって成長と見るのか、どのタイミングで1on1を行うのか。これらを採用前に整えることで、入社後の不安は減ります。
Onefamilyが大切にしているのは、人を「採って終わり」にしないことです。採用、配置、育成、定着は一本の流れです。仕事の構造が見えると、人の可能性を活かす余白も見えてきます。採用の前に仕事を整えることは、候補者に対しても、既存社員に対しても誠実な準備です。
経営者が最初に確認したい3つの質問
- この採用で、本当に解決したい事業課題は何か。
- その課題は、採用以外の打ち手では解決できないのか。
- 入社後90日で、何ができれば「採用してよかった」と言えるのか。
この3つに答えられると、採用活動は感覚から設計へ変わります。JOBJOINは、求人票をきれいにするための支援ではありません。人を探す前に、仕事と役割と育成の基準を整える支援です。
実装するときの順番
業務分解は、きれいな表を作ることが目的ではありません。現場で使える採用・育成の判断材料にすることが目的です。最初は、経営者、現場責任者、実務担当者の3者で「いま詰まっている業務」を出すところから始めます。重要なのは、業務名だけで終わらせないことです。なぜその業務が詰まっているのか、誰の時間を奪っているのか、売上や品質や顧客対応にどう影響しているのかまで確認します。
次に、その業務を「すぐ任せたいこと」「3か月後に任せたいこと」「半年後に任せたいこと」に分けます。ここで初めて、採用時に必須の経験と、入社後に育てればよい力が分かれます。すべてを入社時の必須条件にすると、採用対象は狭くなります。一方で、何でも育成で何とかしようとすると、現場負荷が高まり定着が難しくなります。どこまで求め、どこから育てるかを決めることが、採用の質を大きく左右します。
求人票に落とすときの変換例
| 曖昧な表現 | 構造化した表現 |
|---|---|
| コミュニケーション力がある方 | 顧客要望を整理し、社内担当者へ期限・優先順位・確認事項を伝えられる方 |
| 主体性がある方 | 未完了タスクを自分で確認し、必要な相談を早めに上げられる方 |
| 事務経験者歓迎 | 見積、請求、顧客情報更新など、営業活動を止めない事務処理ができる方 |
このように書くと、候補者は自分ができることを判断しやすくなります。面談でも、抽象的な印象ではなく、過去の行動や経験を確認できます。さらに入社後は、そのまま育成項目として使えます。求人票、面談、オンボーディング、1on1がつながること。これがJOBJOINの実装価値です。
商談前に用意しておくとよいもの
- 現在の組織図、または誰が何を担っているかの簡単なメモ。
- 採用したい職種名と、その背景にある事業課題。
- 入社後90日で任せたい業務の候補。
- 過去に採用や定着でうまくいかなかった理由の仮説。
完璧な資料は不要です。むしろ曖昧な状態から一緒に整理することに価値があります。大切なのは「誰を採るか」だけでなく「何を任せ、どう育て、何をもって活躍と見るか」を同時に考えることです。
社内でこのテーマを議論するときの進め方
この記事の内容を社内で扱う場合、いきなり結論を出そうとしないことが大切です。まずは、経営者、人事担当者、現場責任者がそれぞれ見えている課題を出します。同じ出来事でも、経営者は事業成長の課題として見ており、現場責任者は教育工数の課題として見ており、社員は役割の不明確さとして感じていることがあります。見えている景色が違うまま施策を決めると、どこかでズレが残ります。
次に、課題を「人の問題」「仕事の問題」「仕組みの問題」「関係性の問題」に分けます。Onefamilyでは、人を責めるために分析するのではなく、人が活きる条件を見つけるために分解します。たとえば離職が起きたときも、本人の意欲だけを見るのではなく、入社前の情報、任せた業務、相談先、成長実感、上司との対話を一つずつ確認します。そうすることで、次に直すべき箇所が見えてきます。
無料相談で整理できること
無料相談では、完成された資料がなくても問題ありません。むしろ、まだ言葉になっていない違和感を一緒に整理することから始めます。現在の組織図、困っている職種、最近起きたミスマッチ、育成で詰まっている場面、経営者が手放したい業務などを伺いながら、どの入口から整えるべきかを見立てます。JOBJOINで業務分解から入るべきか、JOBEEで個人理解と1on1から入るべきか、地域PROJECTや経営者リトリートとして扱うべきか。会社の状態に合わせて判断します。
Onefamilyが目指すのは、単発の助言ではありません。人が才能を活かすとき、世界は変わる。その思想を、採用、育成、配置、定着、地域との関係性という実務に落とすことです。抽象的な理念を掲げるだけでなく、明日から現場で使える問い、表、進め方へ変える。そこまで行って初めて、組織は少しずつ変わり始めます。
